ゾッとした。
その発言に、僕を含めた残りの三人は絶句している。何を言い出すかと思えば、そんな身も蓋も無い発言をしても、僕達はどんな表情をすればいい。
「曽根お前、そりゃぁどう言う意味で言ってんだ」
「そのまんまであります、孝雄にとっては酷な話ではあるかもしれませぬが、少なくとも自分達三人は死期を既に理解してるのです。孝雄の言う一週間の中で、どのタイミングでそうなるかはわかりませぬが、三日目か四日目か、それとも最終日か。絶対に死ぬという運命が待っているのであれば、中指立てて抗ってやろうじゃありませんか」
「抗うって、結末は収束しちゃうんでしょ?」
「その通りだ、テメェ言うに事書いて何てこと言いやがるんだ」
七海と潔の言う通りだ。三人の死はこのままだと確定事項として収束してしまう。それに抗おうとして僕は先の一週間手を尽くそうとしていた。だけど結果として同じ死に方を辿った三人の最後を回避することなんてできるのだろうか。
「思い出してほしいであります。自分を含めた皆はどの様に死んだと孝雄は言ってましたか?」
「……俺は頭が吹き飛ばされて死んでる」
「私の場合は分からないけど、孝雄に発見されて死んでるのが確認されてる」
「そして自分は吹き飛ばされての落下死、ならばソレを回避できればいいのではないでしょうか?」
何を言い始めたのかと思えば、僕は素直に驚いていた。
そうだ、全て海公園でソレが起きているのであれば、海公園に行かなければいい。何処か別な場所で立てこもったりすれば、少なくとも助かる可能性が見えてくる。
何故それに気が付かなかった、何故その答えにたどり着けなかった。
「そう言う事か、例えばどこかの地下で一週間耐え忍ぶことが出来れば誰も死ぬことは無いかも知れない。確かにその通りかもしれない。でも何処にそんな場所があるんだ」
「孝雄は忘れてしまったでありますか?」
忘れている? 一体何をだ。何処にそんな便利な場所があるって言うんだ。
それに一週間はソレなりに長い、食べ物から何から揃えるのも今からじゃ時間はかかるし、サバイバルをするようなものだ。曽根は経験があるから簡単そう言う言うが、僕達三人はサバイバルもキャンプもしたことは無い。
それ相応の準備が必要になって来る、そう考えると並大抵の事じゃない。
「あ、そういやぁそうだったな」
潔も心当たりがあるみたいに言う、それに釣られて七海も何かに気が付いた様子だった。
「そうね、それじゃ早速確認だけでも行きましょうか」
「ちょっと三人とも、一体どこに行くって言うんだ」
「なんだ、お前本当に分かってねぇのかよ」
一体どこの話をしてるんだ、心当たり何て何もない。三人が分かっていて、僕だけ分からないそんな場所、何処にもないはずなのに。
「この家、地下室あったろ」
リビングの隣に和室がある。その中に地下室への扉があった事を思い出した。
長い事使われていなかったからか、すっかりその存在を忘れていた。昔父が書斎兼音楽部屋に使っていた地下室、亡くなってからは近寄る事も無かった。
いや、あえて近寄らなかったんだ。そこは父との思い出の場所で、入ると昔の事を思い出してしまうから。
「何度か入らせてもらったけど、相変わらず広いな。十畳ほどはあるのかココ」
「埃だらけね、本当に長い事使ってなかったのね」
「防音対策もしっかりしてるでありますな、これなら少なくとも自分が吹き飛ばされて死ぬことはなくなったであります!」
小さなステレオとアンプ、それに似合わない大きなスピーカー。書斎と言うだけあって本は何冊あるのか分からない。
埃の匂いに混じって、懐かしい匂いがした。忘れていたこの匂いに戸惑いながら、ゆっくりと書斎に入る。
本の匂いだ、それに染みついたタバコのにおいも混じっている。父が生前吸っていた銘柄の臭いが微かに残っていた。この場所は、アレからまるで時が止まったかのような。そんな空間に思えた。
ふと、父が座っていた椅子に自然と目が向いた。
「父さん」