海神の唄 -[R]emember me-

バタフライ・エフェクト―ケイショウヲナラスダレカ― Re:Ⅳ

「俺はどうやって死ぬんだ?」
「潔に関しては一週目と二週目、どちらも同じ死に方だったんだ。爆発か衝撃波の違いだけど、何かに頭部を破壊されて、首から上が無くなってる。そう言う意味じゃ曽根も落下死だね二回とも」
「俺は曽根より楽に死ねるらしい、頭持っていかれるなら痛みを感じないまま即死だろう」

 潔は懐から煙草を取り出して火をつけていた。
 何時もなら窓の側で吸えというところだけど、今に限って言えばそんな事気にしてる程余裕はなかった。多分、今の僕は冷静ではない。
 友達の、今目の前で話をする仲間の死に際を話しているんだ。マトモな感性で居られる訳がない、目の焦点が合わず、挙動不審に見えるだろう。震える手は収まらず、徐々に痙攣の様に大きく揺れ始めていた。

「無理すんな、思い出すだけで胸糞悪いだろ。俺達も人の事言えたもんじゃねぇが」

 口から煙を吐きながら僕の様子に気を掛けてくれる潔は、この話の中でも案外冷静さを保っていた。いや、そう見せているだけで内心そんなことは無いのかもしれない。
 一度に吸うたばこの煙がいつも以上に多く感じる、ソレが原因だとすれば、ストレスにもなるだろう。自分の死に際の話だ。話している僕も頭が狂いそうになる。

「――私は、私はどうなるの?」

 一度心臓がドクンと大きく跳ねた。
 そう、問題は七海の死に際なんだ。僕は二回とも七海の死に際を見ていない、何故潔と曽根は目の前でその最後の瞬間を目撃しているのに対し、七海だけはソレを目撃することが出来ていないのか。

「七海は分からないんだ、二週とも気が付いたら死んでた。何が原因かはある程度分かるけど、その直接的な原因を目撃してないから、何とも言えない」

 思い起こせば、最初の一週目も海公園で瀕死の七海の体を発見したのが始まりだ。あの一週間は戦争に巻き込まれ、街の人はほぼ全滅していた。その中運よく生き残っていた僕と言うのもおかしい。唯一無事だった海公園に向かったところで七海だけが倒れていた。

 そうだ、あの時、七海は何が原因で亡くなっていたのだろう。
 外傷と言えるものは特に無かった、ただ体が冷たくなっていて、僕の腕の中で息を引き取った。直接的な原因は何も分かってはいない。そう考えたその時だった。

「――っ!」

 唐突にノイズが走った、だが世界はブレていない。
 今まさに何かが変わった、何が原因で世界に影響を及ぼすことがあった。何もない、何もないはずなんだ。

「大丈夫か?」
「今、一瞬だけノイズが走った。多分何かが変わったんだと思う」
「何かって、別に何も変わっちゃいねぇけどな」

 ミクロ視点で見た場合、多分何も変わってはいないのだろう。大局的に――そう、マクロ視点で見た場合世界は何かしらの変化を起こしている。それがノイズとなって事象を変化させている。そんな気がしてならない。

「きっと小さなことじゃない、僕達の周りで起きる様なそんな小さな出来事じゃないと思う。強いて言うのなら世界情勢に変化があるような、そんな大局的な物だと思う」
「世界規模とは大きく出るもんだな、分かるのか?」
「正直な所何も分からない、でもこの部屋の中で起きる事で変化があるなら僕が見ている世界がブレて見えたはずなんだ。ソレが無いって事は僕達の知覚外、それも本当に大きなところでの変化だと思う。逆に大きすぎて分からないんだと思う」

 何がトリガーポイントになって、何が変化したのかを観測できれば分かりやすいのに、こういう時だけ何も分からない。目に見えて分かる物なら対処のしようも出来るけど、そうでなければどうすることもできない。
 現状、全てはもしかしたらの話。このノイズ現象だって具体的に理解してる物じゃない。何かが変わった事で起こる現象だという事だけしか分からない。逆を言えば、ノイズが走った瞬間僕の知ってる世界とは全く違ったものに変わってくるという事、それがバタフライ・エフェクトの厄介な所なんだと理解する。