海神の唄 -[R]emember me-

バタフライ・エフェクト―ケイショウヲナラスダレカ― Re:Ⅰ

 一日目――十七時二十五分

 恐怖はまだ抜けてはいない、その証拠に手の震えが収まらないんだ。
 記憶に残ってる二週間で起きた出来事、まず初めに起こりえる事を思い出しながら時計を見た。この三週目の世界と、体験した二週間の世界が何処まで酷似しているかを確かめる為にも、今目の前にいる潔たち三人にこれから起こる事を説明する為にも、ゆっくりと時間だけが過ぎていく。

「――冗談で言ってる訳じゃないよね孝雄」
「冗談だったらどれほど良かったか、僕はずっとそう願ってるよ」

 七海の不安そうな顔が、僕の心を抉ってくる。困惑と悲壮感が隣り合わせに座ってる、そんな表情にも見えた。潔にはあの後自分が何を体験したのか、何を見てきたのかを話した。あんな事があった後だ、彼の冗談を交えた話は一切出てこなかった。
 それ程僕が困惑していたからなのだろう、いや、錯乱していたといっても過言じゃない。正気の沙汰じゃない話を聞いた潔は、一度絶句して、僕の顔を三度見てから頷いてくれた。

「コイツが冗談を言うとしても、こんなバカげた話マトモにすることなんてありえねぇ。つまり俺等じゃ分からねぇ何かが起きてるって事だけは分ってるんだ、だけどな孝雄、お前の言うソレ・・が本当に起きた事だって証拠も確証も何も無いんだぜ、ソレをどうやって証明する?」
「それについては大丈夫だと思う、仮に――そう仮にだ。僕が体験した事と同じ世界ならもうじき証明できる」
「証明って、何をするでありますか?」
「僕達は何もしない、ただ――」

 もう一度時計を見て時間の再確認をする、もうまもなく十七時半になる所だ。僕はゆっくりと立ち上がってカーテンを開けた。もしも同じ世界なら、この後に。

「時間はまもなく十七時半、僕が知ってる世界ならもうすぐ雪が降りだす時間だ」
「雪は今夜遅くだってニュースでやってたよ、流石にまだ――」

 七海が立ち上がって僕の隣に来る、確かに記憶してるニュースの内容じゃ夜遅くから降り出す雪が関東地方を襲うと言ってたような気もする。でも実際は違った。あの日、あの一週間の初日、僕は帰り道で携帯電話のアナログ表示された時計で時間を確認していたんだ。そして七海と電話をした。その時に降り出したんだ。

「雪が振り始めた――」

 驚いた様子で七海は口元を手で押さえて、窓の外を見ていた。その言葉に反応して潔と曽根も立ち上がり、窓へと近づく。

「マジかよ、本当に雪が降ってきやがった」
「預言者ですな孝雄は、そうなるとこの先一週間の出来事も本当に分かるでありますな?」

 驚いているといえば聞こえは良い、だが、良くも悪くも三人は絶句しているようにも見えた。時間通りに起こる雪が降るというイベント・・・・・・・・・・・に、三人は固まってしまった。
 その中で、僕は少しだけ安堵していた。初日に限って言えば辿った世界と同じ事が起きているのだから。問題はその先の話、最初の一週間と、二週間目は内容がまるで違っているからだ。
 流れが変わる発生条件は分からない、僕の行動が世界に影響を与えているのだとすれば、もうこの時点で僕は行動を変えている。つまり、この先何が起きるかがまるで予想が付かないんだ。
 バタフライ・エフェクトで起こりえる小さな変化は、次第に大きな渦となって世界を変える。ならばこの羽ばたきはまだ予兆でしかなく、世界に影響を及ぼす程の物では現時点ではない。

 つまり、そう言う事になる。