僕は一体何を言おうとした、僕は目の前で困惑している親友に何を口走ろうとした。何の根拠があってそんな悍ましい事を口にしようとしたんだ。
破綻する世界に苛まされる中、精神汚染だけが進み、何も信じられなくなった結果がコレか、人知を超えた事象を目の当たりにした人間の本性と言うのがコレか、こんなモノが、こんな事が人間の最後にたどり着く思考なのか。ふざけるのも大概にしろ。
「――悪い」
「ゲームや小説の読み過ぎって訳じゃなさそうだってのは分った、だけど今のお前がどんな状態かってのは分った気がする。一度お前の家に行こう。皆集めてよ」
「お前、僕の言った事信じるのか」
「正直な所、お前が俺に何を伝えたいのかさっぱりわからねぇ。でもな、仲間にそんな表情させる何かがあったってのは分ったつもりだ、一体何があった」
僕をまっすぐと見る潔の瞳に、歪んだ表情をしている僕が映っていた。笑っているわけでも、引き攣っているわけでもない。ただただ狂っている。その表現が一番しっくりくる。瞳孔は開き、視線はブレている。表情筋が固く釣られ、何かに怯えている。そんな表情だった。
「俺は馬鹿だけど、馬鹿なりに考えてるつもりだ。お前に一体何が起きて、何に困惑して、何に動揺しているのか。嘘言ってる用にも見えねぇ、だけど俺には分からねぇ話なんだろ?」
震える僕の肩に潔が両手で支えてくれる、到底信じられない話をしているのにも関わらず、コイツは僕の話をまっすぐ受け止めようとしてくれていた。
困惑してるのが表情から受け取れるのに、僕の不安をかき消そうと笑ってくれてる。無理にでも笑って僕を勇気づけてようと、作り笑いしているのが分かる。
それでも――今の僕には希望に思えた。そう思えるだけの物が潔の言葉と笑顔に心が救われた気がしたんだ。
僕は本当に馬鹿だ、目の前に答えがあったじゃないか。ここに答えがあったじゃないかと、こみ上げてくる涙を抑える事が出来なかった。目頭が熱くなり、次第に溢れてくる涙は頬を伝って潔の制服に零れ落ちて行った。
「三人揃えば何とかの知恵って言うんだろ? 曽根と七海も呼んでお前の話を聞かせてくれ。一人で抱え込んで何も解決できねぇなら、俺達に話してみろ。それで変わる事もあるかも知れねぇんだからさ。仲間だろ?」
「――あぁ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
あぁ、そうだ。僕は何を勘違いしていたんだ。
コイツはそう言う奴だ、そう言う奴だったんだ。絶対に仲間を見捨てない、困っていたら助けてくれる。何かあった時は必ずと言って良い程手を差し伸べてくれる。
仲間だろ。その言葉で今の僕がどれほど救われたか、どれほどこの感情から抜け出せたか、一人で抱え込んで、凝り固まった答えにならない答えを探して、固めては崩れてを繰返して来たこの思考が、結果として答えから遠ざかる邪魔でしかなかったんだ。
コレで何か解決するのか、それはまだ何も分からない。分からないけど、僕一人で考えて考えて、答えの出ない自問自答を繰返し、壊れていくだけの日々から解放されるかもしれない。ソレが、どれほど僕と言う存在に影響を及ぼすのか、世界に対して何かを変えられるのか、それはまだ分からない。だけど、それでいいのかもしれない。
僕には、まだ仲間と言う武器があったんだ。
ソレが嬉しくて、堪らなく涙が溢れていた。膝から崩れ落ちて、潔に体を預けて泣き続けた。